現在の医療では、一度神経が5cm以上欠損してしまうと、それを直すのは困難と言われています。
神経はそれだけ敏感な部位であり、それに伴って回復も難しいのです。
そんな中、現在「クモの糸」を使った神経回復ができないかという研究が進んでいるそうです。
今回の記事では気になるその内容についてまとめていきます。
なぜ神経回復は難しい?

まず初めに、なぜ失われた神経を回復するのは難しいのでしょうか。
人間の神経の一部が失われると、失われた部分を補うために残った神経を伸ばす必要があります。
隙間部分を連結しないと、神経として機能しないからです。
その伸ばす手術をするためには、神経が正しく伸びるための構造が必要となります。
人間の体を構成する『骨』のような役割です。
神経の骨となる部分である「構造」は、今のところ合成導管が使用されています。
しかしこの合成導管を用いて神経の再接続を行うためには4cmが限界なのです。
医療が進歩して伸ばすことのできる長さが増えましたが、それでも一度交通事故などで5cm以上末梢神経系が傷を負ってしまうと、処置が非常に困難となってしまうのです。
これが一般に神経の手術が難しいとされる理由です。
クモの糸をどうやって応用するの?

タンザニアに生息しているジョロウグモの1種が非常に強度の高い糸を出すことで知られています。
強度以外にも耐熱性や弾性、抗菌作用などを併せ持つ優れものです。
この素材がバイオの観点からも注目されており、今回の記事の本題となる「神経の回復手術に用いることができるのではないか」と注目を浴びています。
オーストラリアの首都のウィーンにある大学病院の教授が、この研究をしています。
上の神経手術の方法少し触れましたが、この研究は合成導管の代わりにクモの糸を使えるのではないかというものです。
切れてしまった神経の「構造」としてクモの糸を用いるのです。
クモの糸の繊維は格子状のようになっていて、その周りを取り囲むように神経を再接続する研究となっています。
すでに実験で上手くいったケースが存在する

実は研究は結構進んでおり、動物を使った実験では6cmのダメージ負った神経の修復に成功しています。
そして9ヶ月で元の機能を取り戻し多そうです。
これは合成導管では4cmが限界だったところから考えれば、クモの糸の方が「構造」として適しているということを示唆しています。
合成導管のような物質の場合は神経の働きを阻害してしまう面がありますが、クモの糸は有機の自然物質ですので神経の働きを邪魔しにくいそうです。
最終的には人体での分解も行えるため、拒絶反応がないとのこと。
まだ臨床実験が行われていないため、実際に治療法として使われてはいませんが、この技術が現実に普及して神経回復がしやすくなる世の中が来るのはもう少しかもしれません。
